学長室だより

食べてはいけないもの

血のしたたる牛肉を退け、血抜きの処理をしてから食べる慣習は現在でもユダヤ人社会で守られています。アメリカのスーパー等では、正しく処理した牛肉の売り場が特設されています。モーセの戒めを2千年以上も守っているのです。戒めの中に、食べてもよいものと、忌み嫌うべきもののリストがあるからです(申命記14章3節~21節等)。
食べてもよい肉については「蹄が割れており、しかも蹄の割れ目が二つに分かれていて、かつ反芻するもの」(6節)とされ、食べてはならないものは「反芻するだけか、蹄が割れているだけの動物」(7節)とされています。食べてよいのは雄牛、羊、山羊、雄鹿、カモシカ、ノロジカ、野山羊、アイベックス、アンテロープ、大角羊等があり(4節~5節)、食べてはいけないものに、らくだ、野うさぎ、岩狸、豚があげられ、その屍骸にも触れてはならないと厳命しています(7節~8節)。
豚がタブーの中に加えられていますが、この伝統はキリスト教には継承されませんでした(使徒言行録10章9節~16節、コリントの信徒への手紙一8章1節~13節)。イスラム教には、豚皮製品を忌避するところまで、厳格に受け継がれています(コーラン五「食卓」4〔3〕)。(鈴木 佳秀)