学長室だより
地震による被災者を覚えて
2011年3月11日14時46分に発生したマグニチュード9.0の大地震により、巨大な津波が発生し、未曾有の死者が出てしまいました。深く哀悼の意を表したいと思います。かつて阪神淡路大震災や中越地震、中越沖地震を経験した時にも、無力さを痛感させられましたが、残された者が力を合わせて立ち上がること、互いに助け合うことが最も大切です。そのことに誰しも異論はないでしょう。
不思議なのは、こうした時を狙って人の生死を分かつのは何かと問いかける人が出てくることです。不幸に落ちるのは必然性があるのだと恐怖心をあおり、営利目的で宿命からの解放をちらつかせ、団体への加入を働きかけたりするのです。吉凶判断で人の運命がわかると信じるのは自由ですが、尊い生命を奪われたご家族の悲しみを癒す説明にはなりません。まして死は本人の宿命であるかのごとき託宣は残酷です。
「祝福を祈るのであって、呪ってはなりません。喜ぶ人と共に喜び、泣く人と共に泣きなさい」(ローマの信徒への手紙12章14節~15節)が、われわれが信じる共生の理念です。今は、悲しむ人と共に悲しみを分かちつつ、何ができるかを考え実行すべき時ではないでしょうか。(鈴木 佳秀)