学長室だより

キリスト教から見たキエフ

三寒四温の日が続いています。3月4日にパラリンピックが開幕されましたが、ロシアのウクライナに対する侵略行為が続いています。プーチンは北京オリンピックとパラリンピックの間にウクライナを侵略して傀儡政権を打ち立てようとしました。ウクライナ市民の抵抗と世界中の支援によりその思惑は外れたようですが、キエフが包囲されつつあります。キリスト教から見たキエフについて簡単に述べてみましょう。

キリスト教は紀元30年に十字架刑で処刑されたイエスが復活して救い主だと信じるユダヤ人の間で始まりました。パウロによって異邦人の間にも広まりましたが、ローマ帝国では皇帝を神と仰がないので迫害されました。紀元313年に皇帝コンスタンティヌスがキリスト教に回心してローマ帝国の国教となりました。

395年にローマ帝国がローマを中心とした西ローマ帝国とコンスタンティノープル(現在のイスタンブール)を中心にした東ローマ帝国に分裂すると、西ローマ帝国ではカトリックを国教とし、東ローマ帝国ではギリシア正教を国教としました。両方とも旧約・新約聖書の経典も、三位一体論などの主要な教義も同じです。

1517年にルターが宗教改革をしてプロテスタントがカトリックから分かれたことはよく知られています。ギリシア正教がスラブ民族に宣教して、988年にキエフ公国のウラジミール1世がギリシア正教を受け入れて国教としました。やがてギリシア正教はモスクワ公国にも広まり、モスクワがコンスタンティノープルに次ぐ地位を得てロシア正教が成立します。キエフはロシア正教の源の土地ですが、現在はロシア正教とは異なるウクライナ正教の中心地です。プーチンはそのことをはき違えて拡大解釈しているのです。

宗教改革の広がりの一因となったルターによるドイツ語聖書(本学図書館所蔵)

宗教改革の広がりの一因となったルターによるドイツ語聖書(本学図書館所蔵)

(山田 耕太)