キャンパス日誌

【学生レポート】私の大切な場所~イナカレッジに参加して~

若者たちが期間を定めたチームをつくり、その地域で暮らしながら、地域の課題解決を目指すプロジェクト「にいがたイナカレッジ」に、敬和学園大学の学生が参加しました。この活動は、本学の単位としても認定しているものです。

2004年の中越地震で甚大な被害を受けた長岡市木沢集落木沢にて、この地域の魅力を詰め込んだ商品「木沢セット2017夏」をつくるというプロジェクトに取り組んだ新井美納理さん(国際文化学科3年)からのレポートをお届けします。

にいがたイナカレッジ(インターン)での私たちのミッション

長岡市木沢集落で1か月過ごしながら「木沢セット2017夏」をつくることが私の参加したインターンのミッションでした。

イナカレッジの活動を通じて出会った皆さん

イナカレッジの活動を通じて出会った皆さん

 

木沢は2004年の中越地震で甚大なる被害を受けた地域です。その際に復興支援ボランティアのために新潟県内外から訪れてくれた方々を、木沢の人たちは名誉村民と呼んでいます。その方たちがまた木沢を訪ねたくなるように、思い出してくれるようなモノとして、木沢の夏を感じられる「木沢セット2017夏」という商品をつくり、販売し、届けることが私たちのゴールです。

このインターンに挑戦した理由

インターンに挑戦した理由は3つあります。
1つ目は、敬和学園大学の先輩で、同インターン経験者の亀山咲さん(国際文化学科4年)に紹介されて、興味を持ったからです。
2つ目は、学生であるうちに何か大きなことに挑戦したかったからです。
そして、3つ目は、このインターンの中で自分の好きなことを生かせると確信したからです。

イナカレッジを経験した先輩との出会い

イナカレッジを経験した先輩との出会い

これといった大きな動機ではありませんでしたが、挑戦することに意味があるのだと思い、期待と不安を胸にインターン初日を迎えました。

自分にできることとできないことが分かった、インターン前半

木沢セットをつくるためにはまず木沢を知る、ということで、インターンが始まってすぐに村の人との交流が始まりました。村の人のお宅にお邪魔して、お茶を飲みながらお互いのことを知りました。家族でも親戚でも友達でもない、「地域の人」との出会いは私にとって初めてで、人見知りがちな私はあまり上手く関わることができませんでした。
インターンが始まって数日経ったころ、村の人に「お前はまだ心を開いてない!」と言われました。心のどこかで、村の人との間にどこか線を引いていると自分でも気づいてはいました。しかし、それをどう突破したらいいのか、分からないままでした。最初の1週間は、ずっと村の人とのコミュニケーションに悩んでいました。

最初はぎこちなかった木沢の方との交流

最初はぎこちなかった木沢の方との交流

 

そんなモヤモヤを抱えて2週目に入りました。私は村の人たちと交流していく中で、村の人の面白い一面を見て吹き出して笑ってしまう場面がいくつかあり、それを形にしたいと思いました。そして、その場面を4コマ漫画にしてインターネット上に投稿しました。週に1、2回ずつ更新していった漫画は、想像以上の反響があり、「面白い!」と言っていただくことが何度もありました。自分がつくったものを通して、木沢の人たちと木沢への「好き」が増していきました。

そのようにして増えていった村の人との関わりが、村の人とのコミュニケーションのモヤモヤを消していきました。自分に自信がついたことと同時に、自分にできることとできないことが分かり、「木沢のために何かしたい」という思いが生まれたインターン前半でした。

新井さんが木沢集落の日常を描いた漫画

新井さんが木沢集落の日常を描いた漫画

 

一日一日思い出が積み重なっていった、インターン後半

インターン後半は、前半以上に村の人との交流があったように思います。それに加えて木沢セットづくりもあったので、毎日があっという間でした。
しそジュースをつくったり、大根の種まきをしたり、大福をつくったり、炭焼きをしたり・・・、村の人からのお誘いは「つくること」がベースにありました。いろんな植物を知っている村の人との山登りでは、山の草花を知ることができ、美しい絶景も見ることもできました。木沢の人たちとの時間には必ず感動がありました。
決して便利とは言えない場所に位置する木沢集落でしたが、村の人たちは決して不便だとは言わず、自然に逆らうことなく、むしろ心から楽しんで生きています。インターン生活で、暮らし方について考えさせられることも多かったです。

一つひとつが忘れられない思い出になった集落での生活

一つひとつが忘れられない思い出になった集落での生活

 

木沢の人との思い出が一日一日どんどん増えていくことがうれしかったです。何よりもうれしかったのが、私が描いた漫画を見てくれた、私と同じく絵を描くことが好きな村の人が、木沢の人と私たちインターン生が登場する4コマ漫画を描いてくださったことです。地域の人との関わりがこんなにも楽しくなるとは、インターン1週目の時の私には考えられなかったことです。

 

インターンのゴールである木沢セットをつくる段階に入り、私は木沢セットの箱のデザインを担当しました。透明水彩絵具で夏野菜(インターン中木沢の人たちにいただいたもの)を描き、それをのし紙にしました。そして箱の側面は、「夏の植物」をテーマに、インターン生、村の人、木沢で出会った人、コーディネーターさんみんなで描きました。それぞれの感性が光り、心のこもった素敵なパッケージになったと思います。絵を描いてもらっている時の光景を見ていて、とても楽しく、微笑ましく、木沢に来てこの人たちに出会えてよかったと思いました。

できあがった木沢セットのパッケージ

できあがった木沢セットのパッケージ

 

名誉村民の元へ届いた時にくすっと笑ってもらえるような、心が温かくなるような木沢セットをつくりたいと思っていました。他のインターン生が担当した木沢ポストカード、「木沢を楽しむBOOK」と野菜の贈り物、去年のインターン生作の「木沢の音」、私が担当した木沢セットの箱。私たちが木沢で過ごし、感じたものをストレートに形にしたものですから、必ず、名誉村民の皆さんの心に響くと思います。

「木沢セット2017夏」

「木沢セット2017夏」

 

木沢でのインターンを終えて

私ともう2人のインターン生、コーディネーターさんをはじめ、このインターンでたくさんの出会いがありました。ここで生まれたつながりは、これからも大事にしていきます。

自分にできることとできないことが分かった前半、目まぐるしく過ぎていった後半。全て支えてくれた人がいたからこそ、挫けずにがんばることができました。インターン生活は終わったけれど、まだ村の人に頼まれて達成していないことがあり、ちゃんとお話できなかった村の人もいるので、また木沢へ行きます。
木沢への「好き」が溢れた、充実した1か月でした。木沢で見たもの、聴いた音、笑ったこと、うれしかったこと、交わした言葉、聞いた話、木沢で経験したこと全てがこれからの私を支えてくれると思います。出会い、体験し、悩み、自分を大きく成長させた1か月でした。
インターンが終わり木沢を出た日に泣いてしまったのは、木沢での一つひとつのできごとが、本当に素晴らしいものだったからです。出会えてよかった、そう思えるインターンでした。

木沢と私、インターンから1年が過ぎて

インターンから1年が経ちました。あれから私は1〜3か月に1回ほど木沢に通い、村の人との距離もグッと縮まりました。今年の3月には、晴れて私も木沢の名誉村民となりました。

晴れて私も木沢の名誉村民となりました

晴れて私も木沢の名誉村民となりました

 

今年の夏、「また木沢で何かがしたい」という思いから、私ともう1人のインターン生で映像の自主制作を行いました。2週間ほど木沢に滞在し、撮影、編集し、5分くらいの映像ができあがりました。その映像の上映会を10月末に木沢で行い、インターネット上にも限定公開したところ、大きな反響をいただきました。

「木沢のために何かしたい」という私の気持ちは、インターンのころからずっと変わっていません。もしかしたら「木沢のため」ということは「私のため」なのかもしれません。それほど私の中で木沢の存在は大きくなっています。
私にとって木沢はかけがえのない故郷です。木沢に帰ると通りすがりに声をかけて笑顔をくれる人がいます。この故郷と私の関係は、これからもずっと続いていくでしょう。

(国際文化学科3年 新井美納理)