学長室だより
2006年7月7日号
6月22日は新発田市における敬和オープン・カレッジの第1回があった。新潟大学名誉教授の斎藤文一先生が生涯学習センターで「宮沢賢治と『銀河鉄道の夜』」を語ってくださった。北上市に生まれ、東北大学理学部のご卒業で、超高層物理学(オーロラ)の研究家である先生は、賢治に対する態度も、文芸批評家の姿勢ではなく、むしろその種の態度は排する厳しさであった。超越した宗教的感性をもち、新進気鋭の科学技術者として落葉広葉樹林帯を散策して、自ら大自然の息吹を呼吸した賢治の息遣いを、斎藤先生は新発田市生涯学習センターにみなぎらせてくださった。先生が天井を指さすと、そこには銀河系が流れた。壇上で少し背を曲げて語る先生は「一人のせいの高い、長靴をはいた学者らしい人」を連想させてくださった。それは隔絶された1時間半であった。
車椅子のご婦人がおられた。柏崎から来られたというご婦人がいらした。敬和での1時間目の授業におられたご老齢の紳士が、夜のこの時間帯に、再びお姿を見せていた。
最後に、フロアからの求めに応じて、斎藤先生は賢治の詩の一節を北上のことばで力づよく朗誦された。聴衆の多くには、その意味は通じなかったに違いない。しかし、ことばを超える夢幻の力が、そこにあった。(新井 明)