学長室だより
2008年9月26日号
今から数えると、50年も前のことになる。当時ミシガン州アンナーバーにいたわたしのところに、日本から一通の手紙がとどいた。いま読んでいる英語の本のなかに、不明の箇所があるので、教えてほしい、ということであった。「当地の友人に聞くよりは、アメリカに現在居られる貴方に御伺いした方が宜しいと思いまして」とあった。David Grayson という著述家の一節なのだ。この謙虚な手紙のあるじは、(驚いたことに!)鈴木弼美(すけよし)先生であった。帰国後はますます親しくして下さった。何回か小国(おぐに)の基督教独立学園に呼ばれた。わたしの名古屋時代にはわが狭小な家にお泊りくださったこともある。1)信仰から離れた学問は不可。2)時流に乗らざる学問研究をせよ、とよく言われた。その後、この二点はわたしの基盤となった。今年の夏前に名古屋で安積力也・現校長先生にお会いしたときに、「独立」はわたしの原点です、と語った。いま居る新発田(しばた)から東の方に、ときおり飯豊(いいで)連峰が姿を現わす。あの向こうが小国である。鈴木先生よ、安らかに!(新井 明)