学長室だより
オバマ大統領の広島演説に想う
ツバメが低く飛び交い、つゆ草や紫蘭が咲き、調整池ではアヤメが咲いています。
先週金曜日にはオバマ大統領がサミットの直後に歴史に残る広島演説を行いました。演説の趣旨は広島平和記念資料館のサイン帳に残した次の文に要約されています。
“We have known the agony of war. Let us now find the courage together, to spread peace, and pursue a world without nuclear weapon.” 「私たちは戦争の悲惨な苦しみを知っています。平和を広め、核兵器のない世界を追い求めるために、さあ今、一緒に勇気を持とうではないか」(私訳)と核保有国にも非保有国にも訴えています。
任期最後の年の広島演説は、就任最初の年に「核兵器のない世界」を訴えた「プラハ演説」と対をなしています。「私の生涯の間には実現しないかも知れない」と両演説で述べているように、これはオバマ大統領がやがて実現すると確信する”I have a dream”(キング牧師)です。
広島演説は「すべての人は等しく創られた」という聖書の人間観による独立宣言の一文を核にしています。戦死者の霊を慰め、残された人々に自由と平和の創出を訴えるのは、リンカーンの「ゲティスバーグ演説」を経て、古代ギリシアのペリクレスの「葬礼演説」(ツキディデス『戦史』第2巻)にさかのぼります。広島演説では壮大な人類史の展望の下で、科学技術の進展に伴う倫理の変革を訴えています。(山田 耕太)
2016.7.1 C.A.H 山田学長説教「オバマ大統領の広島演説」