学長室だより

2022年度前期卒業式式辞(山田耕太学長)

山田学長からの式辞

山田学長からの式辞

 

皆さん、敬和学園大学ご卒業おめでとうございます。ここに至るまでさまざまなご苦労があったことと思います。とりわけこの3年近くは、100年前のスペイン風邪のような新型コロナウイルス感染症の世界的流行の中で、人々と会う機会が極めて少なくなり、孤独に陥り気がふさぎ込むようなことが頻繁にあったりして精神的に大変であったと思います。また経済的にもアルバイトなどの収入が極めて少なくなったりして、大変であったと思います。その中で、皆さんよくがんばってきました。大学卒業までに漕ぎつけました。まずはよくやったと自分で自分のことを褒めてあげましょう。

さて、皆さんはこれからの人生をどう生きていくかが次の課題になります。すでにいろいろな職業について来られた人もいれば、これから初めて職業に就く人もおられます。どのような職業に就いても職業に貴賤はありません。どのような職業も社会の中で大切な働きをしているからです。どのような職に就いても、大切なことは人から信用を得て、信用される人になることです。中国の社会でも同じかもしれませんが、特に日本のような資本主義社会では、人々から信用され信頼されることが、目に見えるお金よりも、見えない財産として大切なのです。

人々から信用を得るためには、2つのことを心がけることが大切です。第1に、約束を守ることです。人と約束したことは必ず守ることです。何かするのに決められた日時があれば、その決められた日時に遅れないで物事をすることです。人との間で何かをすると言ったら、必ず忘れずにすることです。第2に、正直であることです。私がイギリス留学時代にアイルランドの友人から教えてもらったアイルランドのことわざを紹介します。「一日幸せでいたいなら、床屋に行きなさい。一週間幸せでいたいなら、車を買いなさい。一月幸せでいたいなら、結婚しなさい。一年幸せでいたいなら、家を持ちなさい。一生幸せでいたいなら、正直でありなさい。」日本のことわざでも「正直は一生の宝」と言います。約束を守り、正直な人であることを心がけてください。そうすれば幸せな人生を送ることができます。

皆さんの旅立ちに、先ほど読んでいただいた聖書の言葉「あなたがたは地の塩である。世の光である」(マタイ5:13、14)をはなむけの言葉としてお送りします。第1に「地の塩」を隠喩(メタファー)にして人間の生き方を語ります。新潟では冬の雪道で滑りやすい坂道などに塩を撒きます。それは雪解けを促すからです。イエス時代でも現代でも塩は人間生活の中で大切な働きをしています。塩は調味料としてわずかしか使いませんが不可欠です。人間の生命維持にとってもわずかな塩が不可欠です。人間の体液は0.9%の塩分濃度になっています。非常にわずかの塩分がないと生命を維持することができません。また、塩には腐敗を防ぐ作用があります。それと同じように、職場においてもあなたが属する社会においても、目立たない存在でも良心的に生きて、必要不可欠の存在となっていきます。そうであってほしいです。

第2に「世の光」を隠喩(メタファー)にして人間の生き方を語ります。イエス時代の明かりはランプでした。手のひらサイズの素焼きの深皿にオリーブオイルを入れてアルコールランプのように紐を入れて火を灯して、柱の上のランプ台の上に置くと部屋中が明るくなるのです。わずかな光でも真っ暗な部屋を明るくします。ここでもランプ台の上にのせられたランプを比喩にして、人間の生き方を語ります。暗闇の中でも、わずかな光さえあれば、周りを明るく灯します。それと同じように、職場においてもあなたが属する社会においても、良心的に生きて、わずかな光でも周りを照らす存在となっていきます。そうであってほしいです。

皆さんお一人おひとりが、約束を守り、正直であって信頼できる人となり、「地の塩」「世の光」として、幸いな人生を送られることを心からお祈り申し上げます。

2022年9月14日
敬和学園大学長 山田耕太