学長室だより
生成系AIとのつき合い方
皆さんは日ごろどの程度AI(人工知能)を使っていることを意識していますか?インターネットで見た記事が明らかにフェイクであると思うことはどのくらいありますか?そういう場合はどうやって確認しますか?自分に関心のありそうな話題や商品を勧めてきたり、スマートフォンの写真を人やテーマごとに並べたり、英語の文章チェックなどにAIが使われています。大学教育においてもデジタル技術の可能性が論じられることが増えています。研究者は生成系AIの可能性に期待しつつも、科学や社会を大きく変え得るこの技術への不安を抱いています。学生の皆さんが使う上で留意すべき点はいくつもあります。書かれた文章のチェックは得意としますが、事実関係の正確さという点では問題が残ります。したがって、専門知識がない学生が生成系AIの書いた文章をそのままレポートにするようなことがあれば、誤情報や偏見がいっぱいのまことしやかな文章で書かれたレポートになる可能性が大きいです。AIはこれまで書かれた膨大な文章から学習するので、その学習内容が差別的であったり偏っていたり、ひどい場合にはヘイトスピーチが含まれていれば、そのまま使えばそんな内容が再生産されることもあります。現状では、生成系AIの原理を理解せずにニーズに任せて使われる向きがありますが、AIが何に向いていて何に向いていないのかを理解し、新聞を読む程度のリテラシーやファクトチェック能力を持った人がAIの原理を理解した上で使うことが重要であると、専門家は警鐘を鳴らしています。インターネット上の記事の信憑性を確認するには、複数の情報源を見る習慣が大事になるでしょう。AmazonがAIに必要な電力需要に応えるために、原子炉開発支援を始めるとのニュースがあります。GoogleやMicrosoftも同じ方向に動いています。生成系AIは通常の検索エンジンの10倍の電力を消費するのだそうです。科学技術の速すぎる進展に人間の理解力が追いついていない現状がありますが、私たちは考えることを諦めないでどのような未来を望むのか議論し、テクノロジーを使いこなす立ち位置を獲得する必要があるでしょう。(金山 愛子)