学長室だより

自分らしさを大切にすること

国内情勢を見ると、参議院選挙を前に給付金支給や賃金上昇、減税の話が声高に語られ、世界に目を転じれば、アメリカ大統領の気持ち一つで関税交渉や大学、マイノリティへの威圧的な政策が取られ、ウクライナでもガザでも戦争が終わらず、核施設を爆撃されたイランは態度を硬化させ、アメリカはさらなる攻撃も辞さない構えです。長期的な視点を欠いたガチャガチャとした嫌な空気の中で、社会は効率と利益を追求し、私たちは、どこへ向かおうとしているのかも分からない激流に身を置いているような気持ちになります。その中で自分は本来何を望み、何をしているのが楽しいのかが分からなくなり、自分の良さや強さが侵食され弱まっているように感じる人は多いのではないでしょうか。自分らしい生き方を探すには、他者のことを思いやるには、何か創造的なことをするには、心の余裕とゆっくり考える時間が必要です。しかし現実には、大人も子どもも次々と押し寄せるタスクを前にして、こなすこと、あてがわれたテンプレート(ひな形)に乗っかってモノを考えたり書いたりすることが求められ、自分はどこにいるのか、自分らしさはどこにあるのかを見失う危険もあります。 
2023年発表の引きこもりの人の推計は146万人、2023年度調査による不登校の小中学生数は34.6万人に上ります。このような「引きこもり」や「不登校」を社会問題とだけ捉えてはいけないように思います。こんなにも多くの人が引こもったり、学校に行かなくなったりするのは、要因はさまざまだと思いますが、猛スピードで進むのではなく自分に合う速度で進みたい、自分の言葉で考え自分の物語を紡ぎたい、自分らしい生き方を探したい、自分らしさを認めて欲しいという人間本来の望みもあるのではないでしょうか。それが「社会問題」という見方だけをされてしまうのは、一方的なようで心苦しさを感じます。新発田市の教育支援センター車野校は、車野小学校跡地を活用していますが、先日工藤ひとし教育長からこれまでの歩みをお聞きする機会がありました。不登校の子どもたちがのびのびと活動できるスペースを確保するために教育長が動かれたこと、近所の農家のお年寄りが、校地内で野菜を子どもたちと育ててくださっていること、そしてそのような方々に感謝を伝えたくて開いた音楽会で、いつもは野良仕事ができる服装の高齢者の方々が、子どもたちに敬意を表して背広を着て来てくださり、これが子どもたちの心に届いたことをお話くださいました。愛とリスペクトのある場が子どもたちの癒しと再生の場になっていることを知り、心から応援したいと思いました。(金山 愛子)

自分らしさを大切に、時には空を見上げてみてください