学長室だより

2022年度卒業式式辞(山田耕太学長)

式辞を述べる山田学長

式辞を述べる山田学長


 

卒業生の皆さん、保護者の皆さん、敬和学園大学ご卒業おめでとうございます。ただ今卒業生一人ひとりのお顔を拝見しつつ卒業証書を手渡しながら、皆さんの4年間の学生生活の中で、さまざまなことがあったことが思い出されてきました。皆さんも4年前に大学に入学した時のご自分の姿と現在のご自分の姿を思い返して比べてみると、とりわけこの3年間のコロナ禍の中でいろいろなことがあった中で、自分が成長したと思う部分と4年前とあまり変わらないと思う部分があることに気がつくと思います。

知識とか経験、あるいは知識や経験に基づくものの見方や考え方においては成長したと思う点が多々あるのではないでしょうか。それに対して自分の生活習慣や好みなどに基づく自分の気質や性格においては、あまり成長したとは感じないのではないでしょうか。

そこで、大学4年間で成長が感じられる知識や経験について、続いて自分の気質や性格について皆さんの人生の新しい旅立ちの時に、2つの勧めの言葉をお送りします。

第一に、知識や経験についてです。皆さんのほとんどの人は、大学卒業は、小学校・中学校・高校・大学という学校教育の終わりと考えていると思います。そうではなくて、大学卒業は生涯教育の始まりの時なのです。生涯教育とは、いつでも、どこでも、だれでもが生涯を通して学び続けることを意味します。その内容は学校教育で習った教科や科目に関する知識や経験に限りません。自分が就職した仕事や職業や顧客に関する知識や経験かもしれません。趣味や娯楽に関する知識や経験かもしれません。自分に関心があること必要なことを生涯通して学び続けていく覚悟を持つことが大切です。その時の教師は自分自身です。自分で自分自身を教えていくのです。

第二に、気質や性格についてです。先ほど読んでいただいたマタイ福音書25章の「タラントン」のたとえ話は、イエスの有名なたとえ話です。「タラントン」という言葉は「タレント」(才能ある人)という言葉の語源となっている言葉で、実はローマ時代の貨幣の単位で使われた言葉で、6,000デナリオンに値します。「デナリオン」という貨幣単位は、英語の「デイ」(1日)という言葉と深く関係している言葉で「1日」の収入に値します。すなわち1デナリオンを新潟県の最低賃金890円で1日8時間労働として換算すると「1タラントン」「6,000日分の収入」は4,272万円です。

「タラントンのたとえ話」を要約すると、「ある人」という大金持ち(イエス時代の大土地所有者)が旅行に出かける時に、「力(才能)に応じて」「5タラントン(約2億5千万円)」「2タラントン(約1億円)」「1タラントン(約5千万円)預けて出かけた。主人が帰る前に「5タラントン」預かった人は「5タラントン」儲け、「2タラントン」預かった人も「2タラントン」儲けたので主人が帰ってくると褒められ、さらに多くのものを託された。それに対して「1タラントン」預かった人は主人が厳しい恐ろしい人だと知って銀行にも預けず地面に隠して(日本流のタンス預金)何もしなかったことで主人にひどく叱られ。持っていたわずかのものまでも取り上げられたというたとえ話です。

全ての人には才能があり、才能の多少の違いはあるにしても、それぞれの人が自分に与えられた隠れた才能に気づいて磨きをかけていかなければならないのです。与えられた才能が少ないことで何もしないでいることに対する厳しい教えが述べられています。皆さんは平均寿命で数えると、これから60年以上生きるのです。皆さん一人ひとりにはそれぞれ違った隠された才能が与えられているのです。自分に与えられた才能が何であるかに気づいて、その多い少ないにかかわらず、自分に与えられた才能に磨きをかけていくことが大切なのです。

敬和学園高校初代校長の太田俊雄は、今から50年ほど前に偏差値中心の教育を「狂育」と呼びました。また、一人ひとりに与えられた才能のことを「神さまからの宿題(課題)」と呼びました。皆さん一人ひとりが、自分に与えられた隠された才能すなわち「神さまからの宿題(課題)」に気づかされて、他の人とは違った自分らしい生涯を歩んでいく道を示すことが本当の「教育」なのです。皆さん一人ひとりが幸せな生涯を過ごされることを心から祈念して祝辞の言葉に代えさせていただきます。

2023年3月23日
敬和学園大学長 山田耕太