チャペルのひびき

自らの弱さに向き合うことによってこそ 

チャペル・アワーは、榎本榮次先生(敬和学園理事長)が、ルカ福音書をテキストに説教をご担当くださいました。哲学者ブレーズ・パスカルの「人間は考える葦である」との『パンセ』という書物に記された言葉、また、宮崎駿監督の最新作『君たちはどう生きるか』、そしてその制作のきっかけとなったとされる吉野源三郎による同じタイトルの名著に触れながら、自分の弱さにどう向き合うべきかについてお話しくださいました。できたら目を背けたいような自らの弱さや卑小さや過ちといったことから目をそらさず、それらにどう対処してゆくかということの中に人間の偉大さが現わされてゆくということを、先生は伝えてくださったように思います。とかく、世界を白と黒とに分け、自らを正義の側において、他者をまた世界を断罪してしまうのが私たち。けれども実際には、人間も、世界も、そんなに明確に割り切れるものではない。そんな割り切れなさに耐え、自らの内にも存在する弱さや闇に向き合うことをとおしてこそ、そこにも注がれる神の愛をより深く知ることができ、世界に確かな光を灯してゆくことができるのでしょう。聖書の中には、自らの弱さや闇に向き合いつつ、神の愛の光を灯しながら歩んでいった人々の物語がたくさん記されています。主イエスの弟子、使徒ペテロや使徒パウロといった人々もそう。聖書に親しむことにより、またチャペル・アッセンブリ・アワーの時間をとおして、そのような物語にたくさん触れ、それぞれの人生の指針としてほしく思います。(下田尾 治郎)

Ⅰ.チャペル・アワー 
説教 「君たちはどう生きるか」 理事長 榎本榮次 先生 
 

<参加学生の感想>
感想1) 人間は自分の弱さを分かるほど偉大であるということが心に残りました。自分の弱さや問題点は、目を背けてしまいたくなるけど、それに気がついた時に、どうするかを考えることこそが人間のすばらしさだと知り、自分の中の弱さと向き合うことはとても大事なのだと分かりました。つらいことや苦しいことから逃げ、自分の幸せを探すと本当の幸せにたどり着くことはできず、本当の幸せは逃げ出したくなるところでこそ見つけることができるのだと思います。私はどう生きるか、を考えた際、嫌なことから逃げ続ける人生よりも、自分の知恵を使い、どんなできごとも乗り越えるような人生を歩んでみたいと思いました。
感想2) 幼いころは、全ては正義と悪にはっきり分かれていると思っていた。しかし年齢を重ねて知識が増えていく中で、完全に正しいと決めるのは難しいことだと感じるようになった。悪だと思った中によい要素があったり、正しいと思っていた自分が悪だということもある。それに気づくだけで終わらず、それを受けてどうするかを考えることが重要であり、考えられるのが人間の偉大さだと榎本先生のお話しから学んだ。失敗をそのままにすれば何も変わることはないが、それで終わらず行動を起こせば、何か変わるかもしれない。真理は真っ直ぐじゃない、という言葉がとても腑に落ちた。この先も、多くの課題や矛盾、不条理など、内と外のさまざまな悪に対面するはずだ。しかしそれを恐れず、できごとの表と裏を見て、自分はどうすべきか、葛藤しつつも考え続け、自分なりの真理にたどり着きたい。