学長室だより

「木を育てるように~新井明先生への感謝」

敬和学園大学第2代学長の新井明先生が10月9日に天に召され、10月14日のお別れ会に数人の敬和学園関係者と参列しました。息子さんたちの手による心のこもった式でした。新井先生は、2002年の「北越のともしび」と題した新入生歓迎公開学術講演会で多くの教職員に感銘を与え、それがモトで、ご友人でいらした北垣宗治初代学長の跡を継いでくださったのでした。先生をよく知る兄に「新井先生ってどんな方?」と聞いてみると、「理知的で賢明な方」という答えでした。まさにそのとおりでした。自然を愛された新井先生は、「木を育てるように人を育てる」を教育方針として、その象徴に入学記念の植樹を始められ、今ではキャンパスにユリノキの林が育っています。そこには「育て給うは神。待つこと、それも希望と愛情をもって」という意味が込められていたと思います。2000年代初めは難しい時期でしたが、新井先生は上手に舵取りをなさいました。ミルトン研究の第一人者でありながら、いつも笑顔でユーモラスな空気をまとっておられた新井先生は、学生にとっても親しみやすかったのでしょう。ある学生が、「敬和では食堂のお姉さんも、お掃除のおばさんもみんな仲良し(云々)」と書いて渡しました。新井先生はそれをいたく喜ばれ、食堂のお姉さんの所に持って行くと、その紙は長いこと厨房の壁に貼ってありました。

先の講演では、イスラム過激派によるアメリカへのテロ攻撃への報復を誓ったブッシュ元大統領とは対照的に、イスラム過激派により処刑された米国人記者の身重の妻が、「パパはテロをなくすために、報復ではなく、愛や共感、友情を求めたと子どもに語ってあげられる」と語ったことを紹介され、「この北越からこの国と世界に向かって、心の『ともしび』を掲げていこうではありませんか」と呼びかけられました。どんな時にも愛と共感、友情のともしびを掲げ続けることが敬和の使命です。それも軽やかに、ユーモアを忘れずに。新井先生、新発田や聖籠、新潟の多くの人々の心に先生が灯してくださったともしびは今でも暖かく光を放っています。(金山 愛子)

2008年度植樹式(左から6人目が新井先生)

2008年度植樹式(左から6人目が新井先生)