学長室だより

心を耕す~教養

これまで学外活動について学生たちの話を聞いて強く感じたのは、「豊かな土壌に根を張る」ということです。映像制作ではビデオに盛り込めなかったたくさんの映像があったといいます。プレゼンテーションについても、これまで得た知識や経験から盛り込めたのはほんの一部でしょう。でもそれで良いのです。作品は子どものようなもので、産み出せば自分の手を離れます。盛り込むことのできなかった風景や何気ない会話、公園をわたる風、調べきれなかった関心事が作品に厚みをもたらし、自分の中にとどまり、相手国の人々や文化を大切に思う心につながるでしょうし、次の研究の芽となるかもしれません。バイオリニストの前橋汀子さんは、ソ連への留学時代、チャイコフスキーの「バイオリン協奏曲」のレッスンで、先生からこの作曲家のあるオペラを見たかと聞かれます。また先生はそのオペラの原作者プーシキンの詩を暗記することを求めました。さらには、プーシキンが決闘した場所にまで、深い雪をかきわけながら連れて行ってくれたと言います。ストーリーテラーのマリー・シェドロックは、アンデルセンをよりよく語るためにデンマーク語を勉強したそうです。音楽の道に進もうか迷った末に敬和学園大学に来た学生は、文学の学びも確かに音楽につながっていると感じると話してくれました。リベラルアーツは「教養」とも訳され、「教養」とは”culture”。心を耕す(cultivate)ことからきています。根の深さが大きな木を育てます。学生の皆さんには、大学にいる間に、表面に見えない豊かな土壌を耕す学びをたくさんしてほしいと思います。(金山 愛子)

映像制作の活動報告をした学生たち

映像制作の活動報告をした学生たち